メディア掲載 【フジサンケイビジネスアイ】ストレスオフ組織の作り方 キーワードは「居場所」と「複眼」

脳科学者を顧問に迎えている当社の研究で、「ストレスオフ県」の第1位は鳥取県だったことを前回紹介した。

対象の女性たちは既婚、未婚、有職、専業主婦などさまざまだが、「ストレスを感じていない」と答えたものの上位は「友人」や「ママ友」「親子関係」。

まず、この結果から見えてくることは、良好な「対人関係」だ。女性は年齢や環境に応じて目まぐるしく属性が変化し、順応や対応を迫られる。この点がストレスオフできている意義の大きさは、同じ女性として十二分にうなずける。

そしてもう一つ注目したのは、「居場所」という捉え方である。

女性は承認欲求が強く、常に居場所を求める生き物であるため「居場所がある」と自覚できている状態は、受け入れられたい、認められたいという欲求が満たされる状態だ。居場所は交流の場でもあり、他者との心地いいボディータッチや会話、すなわちグルーミングで分泌される「愛情ホルモン(オキシトシン)」はストレスを大きく左右するという事実もある。

鳥取県の女性たちには友人、ママ友、親子関係という居場所があり、また、一人が同時に複数の居場所を持つことができている。鳥取の女性たちがいかに良好なストレスオフ状態であるかが推測されるだろう。

鳥取県の結果から見いだした居場所作りだが、実は当社も以前から積極的に取り組んでいることの一つである。毎朝全社員が集合する朝ゼミ、5人1組のクラス制度、女子会、男子会など。当社では一人の社員が複数のグループに所属している。

上司と部下の1対1、1つのグループだけでは偏りも、相性もある。そこで業務上の関わりの少ない者同士をチームにし、互いの背景や立場を理解して、分かり合える環境を用意するために始めたシステムだ。

スタートしてから個々の社員を観察しているが、チームが複数存在することで、それぞれにとっての居場所をきちんと見つけられているように思う。とりわけ女性は特有の承認欲求が満たされ、女性の多い当社ではこれが個々の、ひいては組織のストレスオフにつながっている。

この複数の居場所の提供は、組織内ではもう一ついいことがある。複数の視点、「複眼」を社員たちが持てるようになることだ。

視点の広がりがスキルやモチベーションの向上につながり、視野が広がることで仕事はもちろん、家庭や資格、将来など自身を取り巻く多くを捉えられる人間力の高い社員が育つ。

女性の例で話を進めてきたが、グルーミングによるオキシトシンは男性の脳でも分泌され、居場所作りの重要性は、もちろん男性社員にも同じことが言える。当社のグループ作りでも手応えを感じている。

次回は、社会や組織が抱えがちなストレスとの向き合い方の課題点と、当社が実践しているアプローチについて取り上げる。(原稿:代表取締役 恒吉明美)