メディア掲載 【フジサンケイビジネスアイ】ストレスオフ組織の作り方「少しずつ実現させ日本の文化に」

昨年後半のヒットドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』、通称「逃げ恥」-。夫が雇用者で妻は従業員という契約結婚でスタートした夫婦が、最後はともに最高経営責任者(CEO)になり、協力して結婚生活を送ろうというハッピーエンドで幕を閉じたが、これぞまさに「主体性」の話。同じステージに立って自らの意志を持ち、認められている充実とやりがいに満たされた毎日を送りたい。既婚、未婚、子供の有無にかかわらず、この妻の立場に共感を覚えた女性は少なくなかったはずだ。

本連載では当社の事例でストレスオフのメソッドを伝えてきたが、このドラマのように企業だけでなく家族や学校、町内会なども組織の一つ。社会全体が手を携えてストレスオフに向き合うべき時代がきている。この“手を携えて”は単に耳障りのいいだけの言葉ではない。脳科学の観点から、「一緒に」や「居場所(役割)」はストレスオフの重要な要素だからだ。

現在当社では今秋の立ち上げを目指し、ストレスオフコンソーシアムの準備を進めている。厚生労働省のストレスチェックで好成績を収めている組織として、僭越(せんえつ)ながら旗振り役を務めている。だが当社だけでは力が足りない。前回紹介したロート製薬やファンケルなど先駆けてストレスオフに取り組む大企業は社会的影響力を行使し、脳科学者と共同のストレスオフ研究機関を持つ当社は科学的根拠を提供する。また、当社は大企業で成功した方法を社内で実践し、中小企業でも実現できる文脈に翻訳するのも重要な役目。国内企業の99%を占め、日本経済の支えである中小企業にこそ、ストレスオフは必要とされている。ストレスオフ要項を満たす企業でなければリクルーティング会社や人材派遣会社と取引できない、人事や労務へのストレスオフ専門家配置の義務化など、ゆくゆくは採用や人事にも影響することが理想だ。

そしてもう一つ、筆者の悲願と言っても過言ではないコンソーシアムのミッションがある。ストレスオフのメソッドによる女性活躍の後押しである。筆者自身が女性社長であり、また女性社員を多く抱える当社のストレスオフの成果をシェアして他の組織で生かしてもらう。それが女性たちの主体的な働き方、生き方の一助になり、多くの組織が模索を続ける女性管理職の登用、すなわち「居場所」作りという課題の光明にもなれるのではないだろうか。

さて本連載も最終回。初回で「『女性脳』を活用して上司と部下の関係を再構築する新しい発想」と伝えたが、ヒントは見つけられただろうか。深刻化する過労死問題などから、ますます働き方、休み方に注目が集まる今、組織が取り組むべきは、ストレスマネジメントできる人材が育つ環境整備だ。本連載をきっかけに一人でも多くの人の、一つでも多くの組織の「ストレスオフ」が実現し、それが日本の文化となる日がくれば心から幸いである。(原稿:代表取締役 恒吉明美)

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