メディア掲載 【フジサンケイビジネスアイ】ストレスオフ組織の作り方 愛をつなぐ「ファミラブ」制度

昔、付き合っていた人に無邪気な質問をした。「もし私が先にいなくなったら?」。彼は「君のお母さんの面倒をみるよ」と言い切ったのだ。意外な答えに驚き、同時に無償の愛に感動した。こんなこともあった。ある社員の父親が大病で亡くなり、家族の健康診断も補助すべきだったと悔やむ筆者に、彼は「お金じゃないんです。大切な人の顔を思い浮かべるきっかけ作りをしてもらえたら」と話してくれた。自分の大切な人に気持ちを傾けてもらえたとき、自分のこと以上に大きな喜びを感じることがある。それが愛する家族ならなおさらだ。当社の「ファミラブ」は、そんな温かな気持ちを社員と共有するために3年前から始めた。

これがなぜ「ストレスオフ組織」に繋(つな)がるのか? プライベートは会社の問題ではないと言い切る企業も多いと思うが、当社研究所の調査で家族と過ごす時間をきちんと持つ人は低ストレスだという結果が出ている。

筆者自身、大好きだった祖父母を孝行する前に亡くしたことが人生最大の後悔であり、「ファミラブ」にはとりわけ強い思いを持って取り組んでいる。

「ファミラブチケット」はゴールデンウイークや夏季休暇のために出る1万円のギフト券。家族で過ごす時間のために用意している。「ファミラブウィーク」は休める人は休む、いつもより早く帰宅するなど、家族との時間を増やすための1週間。外部との打ち合わせも入れないなど、スローなスケジュールにするよう定めている。

社員の誕生月には「お財布健康診断」として、毎月勉強会に招いているファイナンシャルプランナーと個人的に面談できる。人生でストレスになることの多いお金の問題をストレスオフ。これも家族のためだ。

そして、どうしてもやりたかった「退職金前払い制度」は、給料に1割乗せて月給を支払い、退職金を受給できる年齢ではかなわない可能性が高い親孝行を、今してもらうための制度だ。会社としては退職時支給の方がリスクは低いが、「ファミラブ」精神は筆者自身の一番の原動力であり、それくらい社員はかわいくて仕方がない。社員の子供や奥さまが贈ってくれる愛らしい手紙や手作りギフトは何よりの宝物であり、最高のストレスオフだ。

こうして少しずつ広がっている「ファミラブ」の連鎖を、お客さまにも繋ぐ取り組みがいよいよ始まった。このリレー、果たしてどこまで広がるか?考えるだけでワクワクする。

ところで「ファミラブ」はご想像通り“ファミリー・ラブ”の略だが、当社の場合は“FaMely Love”と“Me(私)”を入れている。しかも読み方をちょっとひねって“For Me Love”とも。働き方、生き方の多様化はますます進み、家族を持たない社員も増えるかもしれない。当社はそんな社員の居場所の一つだと伝えたいから“FaMely Love”。これも当社得意のおせっかい、だろうか。(原稿:代表取締役 恒吉明美)