メディア掲載 【フジサンケイビジネスアイ】ストレスオフ組織の作り方「ここち、らくちん。」なCCを実現

実店舗を持たない通販業にとって、コールセンター(CC)は顧客と企業をつなぐ重要な部門だ。受注だけでなく、意見をいただく、質問に答える、そしてブランドのメッセージを伝えるなど、ぬくもりのある言葉のやり取りができる貴重なコミュニケーションの場。強いブランドを作る要として、運営に関する著書も多数出版されている。しかしグーグル検索で「コールセンター」と入力すると、関連ワードで表示されたのは、残念ながら「ストレス」だ。当社も外部に委託し、200人近くのスタッフが業務にあたり日々環境向上に努めている。

自信たっぷりに始めたが…。実は筆者がCCに意識を傾け始めたのはわずか数年前。創業以来、広告第一。CCにはその戦略にのっとった電話応対用のスクリプトを渡せばいいだけで、効率良く売り上げが上がりさえすれば、筆者自身が出向く意味や必要性を感じなかった。

意識が大きく変わったのが、売り上げ至上主義から一転、顧客満足(CS)第一に舵(かじ)を切った5年前。経営方針の一新を周知するためCCを訪れたが、初めてセンター内の雰囲気がよくないこと、不満や不安などいくつもの課題が浮き彫りになった。「やろうとしていることの波紋を広げるには、内側から変えなくては」。ここから筆者のCC改革が始まった。これまで連載してきたストレスオフ組織のメソッドによるものだ。

取り組んだのは「居場所」作り、「ファミラブ」精神の波及、「イメージ共有」。CCのスタッフも仲間、という身内意識を持って筆者自ら足を運び、自分の言葉でメッセージを伝え、トレーニングも頻繁に行っている。一体感の醸成には、毎日必ず通るエントランスに大人の身長ほどもある主力アイテム「オールインワンゲル」の模型を設置。ブランドコンセプトの「ここち、らくちん。」を表した、ぬくもりのある木目調の壁には社員たちの顔写真や名前を貼り、本社との心的な距離もぐっと近づいた。CCをねぎらうために米国発の「CSウィーク」も導入している。CCスタッフが相談して内容を決めるが、それはもう和気あいあい。昨年、CSウィークの旅行の帰途、本社に立ち寄って、ブランドへの愛のこもったメッセージを贈ってくれるという涙腺が緩むサプライズもあった。

ほんの一部を紹介したが、これによりCCで何が起こったか? 他社のCCも経験したスタッフから「こんなに大切にされたことはなかった」と言ってもらえるようになった。自分ごと化で主体性とやりがいが生まれ、「自分の言葉で商品の魅力を伝えられることがうれしい」そう話すスタッフも増えた。次の目標は、5人に一人の顧客が、その人の言葉でブランドの魅力を語ってくれるようになること。それは当社が伝えたいストレスオフのメッセージだ。語り手が増えれば、やがて文化になる。その日は、そう遠くはないと確信している。(原稿:代表取締役 恒吉明美)